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大阪地方裁判所 昭和46年(ワ)2503号 判決

原告 北桝一

被告 大田安治

主文

被告は原告に対して、金七五万五、〇〇〇円とうち金二五万〇、〇〇〇円に対する昭和四五年一一月一六日から、うち金二五万三、〇〇〇円に対する同年一二月一三日から、うち金二五万二、〇〇〇円に対する同年一二月一六日から、それぞれ支払ずみにいたるまで、年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮りに執行することができる。

事実及び理由

一、当事者の求める裁判

(原告)

主文同旨の判決

(被告)

原告の請求を棄却する。

二、事実関係

(請求原因)

(一)原告は昭和四五年八月二七日被告に対して別紙約束手形目録記載の約束手形三通を振出交付し、七五万五、〇〇〇円をうち二五万〇、〇〇〇円の弁済期を同年一一月一五日、うち二五万三、〇〇〇円の弁済期を同年一二月一二日、うち二五万二、〇〇〇円の弁済期を同年一二月一五日と定めて貸付けた。

(二)よって、原告は被告に対して、貸金七五万五、〇〇〇円と主文記載のとおりの各金員に対する記載のとおりの期間内の民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(請求原因に対する認容)

請求原因事実を認める。

三、理由

(一)、請求原因事実については当事者間に争いがない。

(二)、ところで、金銭の消費貸借契約を締結するに当り、貸主が借主に対して金銭交付の方法として貸金額を額面金額とする約束手形を振出交付した場合においても、反対の特約がない以上消費貸借契約は額面金額について約束手形の振出交付がなされた時に成立するものと解するのが相当である。けだし、消費貸借契約における要物性は金銭の有する経済的価値が貸主の負担において借主に委譲されるところにあるものというべく、借主は借受金額を額面金額とする約束手形の振出交付を受けることにより、これを利用して手形割引を受け、あるいはこれを支払のために裏書交付して、借受金銭の交付を受けたのと同一の経済的目的を達し得るのであるから、これによって要物性は充たされているものと解するのが相当だからである。

(三)、そして、右事実によると、原告はその主張する金銭貸付の方法として貸金額を額面金額の総額とする三通の約束手形を被告に振出交付したのであるから、原告の本訴請求はすべて理由あるものというべく認容することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 中山博泰)

〈以下省略〉

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